1962年作品 月給泥棒
   Salary robber
Profile
Filmography

back
封切1962年12月8日〜12月15日
93分(カラー・東宝スコープ)東宝
併映『暗黒街の牙』(監督:福田純)

興行成績 4900万円(280円)
 
スタッフ・キャスト等、Web上の情報
日本映画データベース
キネ旬データベース
goo映画
allcinema online
ぴあシネマクラブ
CinemaScape−映画批評空間−
 
 

宝田明、司葉子を配したサラリーマンコメディー。カメラ会社の社員・吉本(宝田明)は、「出世計算機」の異名を持つほど出世のためなら手段を選ばない。上司の息子の裏口入学を斡旋して出世したりとか・・・。そして、商談のために来日した石油王国の富豪ホセ・ダゴン(ジェリー伊藤)との契約をライバル社から奪うべく策略を練る。なじみのホステス・和子(司葉子)に色仕掛けをさせて狙い通りダゴンに気に入られるが、和子と吉本もいい仲になりかけた矢先、ダゴンが和子を国に連れ帰ると言い出して・・・。

後に岡本喜八自身が「『ニッポン無責任男』と設定も脚本家も同じだということに気付かなかった。これはないだろうと思ったけど後の祭。こういうのは困る。」と語っている通りのずさんな企画物で、内容的に見るべき価値は“ジェリー伊藤の怪演”くらいしかない。実際、当時の批評もジェリー伊藤の怪演に触れているものが多かったという。

ただ、岡本喜八のフィルモグラフィー的には重要なポイントがある。
当時のプレスシートによれば、「岡本喜八監督作品であることを全面に押し出す」「内容よりも“喜八タッチなドライ喜劇”を売りにする」とあったそうで、「岡本喜八」の名が世間に浸透してきたことをうかがわせる。

 ペペチー能書き
岡本喜八の初期のキャリアの中に「現代風俗喜劇」と呼べるジャンルがあるが、おそらく本作が最後と言えるだろう。
この後も「与えられた企画物」は多々あるのだが、それらは明確に「岡本喜八の思想」が反映され(それ故『江分利満氏の優雅な生活』でもめるのだが)、名実共に「喜八カラー」が色濃く出てくる。これは、前述した「岡本喜八」という名の世間の浸透度と比例するのではないだろうか。

彼の作品にコメディーは多いが、いわゆる「コメディー役者」をあまり起用しない。コメディーは役者に負うところが大きいのだが、岡本喜八はカメラとカットでコミカルに仕上げる。
それでも、どうしても役者に頼ることは必然で、この映画ではジェリー伊藤一人が背負っており、宝田明・司葉子というメロドラマ俳優にコメディーを演じさせるという会社側の企画は失敗していると言っていい。正直、他の役者だったらもっと面白かったかもしれない。
同じ「現代風俗喜劇」に位置するデビュー作『結婚のすべて』で魅せた西部劇的演出も物足りなく感じられ、もしかすると、喜八自身この企画に面白味を見出せなかったのではないだろうか、とさえ思う。
2005年9月24日鑑賞(CS録画)★3
(参考・引用) kihachi フォービートのアルチザン(東宝出版事業室・刊)