1965年作品
   Samurai Assassin
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封切1965年1月3日〜1月14日
122分(白黒・東宝スコープ)東宝・三船プロ
併映『社長忍法帖』(監督:松林宗恵)

興行成績 1億7300万円(350円)
「キネマ旬報」65年度第26位
「映画評論」65年度第15位
日本映画技術賞(65年度)美術

 
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万延元年二月十七日、江戸城桜田門外。時の大老井伊直弼の登城を待ち受ける不審者=水戸浪士達。しかしその日、井伊直弼は登城せず、水戸浪士達の間で「誰か内通者でも」との疑念が持ち上がる。水戸浪士の首領・星野監物(伊藤雄之助)が疑いの目を向けたのは、尾州浪人ながら水戸浪士に加担している新納鶴千代(三船敏郎)と上州浪人の栗原栄之助(小林桂樹)だった・・・。
三船プロと東宝による第1回提携作品。
これが郡司次郎正の「侍ニッポン」5度目の映画化。かつては伊藤大輔も監督し、「人を斬るのも侍ならば恋の未練がなぜ切れぬ」というフレーズが有名らしい。ニヒルで柔和な二枚目が本来鶴千代のイメージのようだが、橋本忍は三船であて書き、粗野な豪傑に仕立てた。ミステリータッチの橋本脚本とスピーディーな岡本演出が絶妙。
 ペペチー能書き
岡本喜八初の制作費1億円超の大作で、初の本格時代劇。しかし当時は、時代劇の作法に則った「正調時代劇」こそ時代劇の正統派で、黒澤以降のリアリズム時代劇は「新時代劇」などと呼ばれていたらしい。本作もその新時代劇の一つで、クライマックスの泥臭いリアリズムは、スピーディーな喜八リズムと相まって圧巻。

上記で私は、主役・鶴千代を「粗野で豪傑に仕立てた」と書いたが、この話自体は豪傑向きの話ではない。腕は立つが“女々しい”男の話である。
どうやら岡本喜八は、黒澤ミフネ的な“豪傑”はお好みではないようで、たいがい“変なオジサン”的な扱いをする。要するに変化球好き。もちろん三船プロ作品なので主役・三船は当然かっこいいのだが、ストレートなヒーロー像でない変化球のストーリーがはまったのだろう。もっとも、岡本喜八自身は『侍』を「剛速球のつもりで撮る」と語っているが。
『江分利満氏の優雅な生活』の変化球っぷりで会社に大目玉をくらい、次作『ああ爆弾』がB番組に回されるといった時期だったため、親友・三船が救いの手を差し伸べたとも考えられる。会社側が「シナリオライターの書いたしっかりしたシナリオで、喜八の変化球でちょうどいい」と考えたらしいことからも、そうした事情がうかがえる。結果として、橋本忍の脚本がミステリー風の“時代劇としては変化球”だったため、ストレートな豪傑ミフネを望んだ観客は肩すかしをくらったかもしれない(実際そうした宣伝が展開されたようだ)。

また、絵コンテ主義の監督は、必要なセットを画面に写る最小限にし、制作費を大幅に抑えたというエピソードも残っている。
2007年12月10日再鑑賞(BS)★5
(参考・引用) kihachi フォービートのアルチザン(東宝出版事業室・刊)他