2003年8月2日(土)のひとりごと 「メロン記念日」


前回は「ウニ食えウニ!」の一言で終わってしまうひどい書き物だったわけですが、今日はメロンです。
ウニに続いて高級食材です(そういう問題じゃない)。

郵便局行ったんです。
休日とか時間外とかに書き留めとか受け取れる窓口あるでしょ、本局には。
そこに行ったら、列の前で女性が何やら局員と揉めている様子。
いや、正確には揉めているわけじゃなくて、このオバサンに局員が説明しているんです。
どうやらこのオバサン、いや、オバサンオバサンと書くのもナンなので、斉藤さん(仮名)としておきましょう、この中年女性の斉藤さん(仮名)はどうやらメロンを「ゆうパック」でどこかへ送りたいようなのです。

よほど高級なメロンなのか、メロン=高級だと思っているのか、言葉づかいはとても丁寧なんですが、なんだかもう必死なんです。
もうこの段階で私の理解の範疇を超えているわけですよ。
たかがメロンごときで何を必死こいているのかと。
どこで買った高級メロンなのかは知りませんが、買った店で配送してもらえっちゅう話しですよ。
しかし人にはいろいろ事情ってもんがありますからね。
初めはご挨拶がてら持参するつもりが、諸事情で行けなくなってしまったから、ひとまず送りましょうってことかもしれませんしね。
だったら自分ちで食っちゃえ。日持ちする物を送り直せ。
もしかしたら家庭菜園で初めてできたメロンで、是非ご賞味下さいってんで送るのかもしれませんね。
家庭菜園でメロン作ったのかよ、すげーな。

斉藤さん(仮名)は「クール宅急便みたいなので送りたい」と言ってるんですよ。

だったらクロネコヤマトに頼め!


郵便局でもありますけどね、チルドゆうパック


そしたら局員が言うわけですよ
「通常メロンは常温で送ることが多いんです。冷やすとかえって傷みが早まりますから」
常識です。
そしたら斉藤さん(仮名)は言葉づかいは丁寧ながらもどこか不服そうなんですね。
お前は一体メロンの何が分かっているのかと私は言いたくなりましてね、この一つしかない窓口に何人も並んでいるわけですよ。だんだん腹立たしくなってきたわけですよ。
待たされていることよりもむしろ、もういい年齢の人がたかがメロンごときで大騒ぎしていることが腹立たしい。さも高級品で細心の取り扱いをして欲しいみたいなこと言ってることが腹立たしい。
千疋屋か!千疋屋のメロンなのか!だったら千疋屋で配送してもらえ!

ゆうパックもそうですが、各社宅配便なども、それなりの値段で配送する所は、荷物もそれなりの扱いしかされていないことを知っておきましょう。
所詮バイトのお兄ちゃんが取り扱うんですから。社員だって元ヤンキーの兄ちゃんとかですから。
荷物なんかボンボン投げちゃうんだから。「取扱注意」とか書いてたって注意しながら投げるだけなんだから。
今はどうだか知らないけど、かつて彼ら宅配業者の社員は固定給だったの。
どんなに頑張っても給料は上がらない。その代わり担当地域が狭くなっていく。
つまり労働の対価としては上がっていくわけですが、駆け出しの頃はとても広域を担当しているわけです。一個一個丁寧に扱っている余裕なんぞありゃしません。

高級品をきちんと配送しようとしたらそれ相応の配送料を払わねばなりません。
先日、日本通運主催の「美術品梱包入門」って講座のポスターを見ましてね、そんなのがあるんだ!と興味深く、その道のマニアに聞いたところ、「美術品の梱包は日本通運が一番」というのが業界の常識なのだそうです。
ちなみに仏像一体送るのに百数十万円だか数百万円だかかかるそうです。
つまりね、日本人は、送料とかライセンスとか形の無い物にお金を払うという概念がまるっきり無い。
そういうのはサービスの範疇だという甘えがある。そういうのも腹立たしい。

そんなこんなで、斉藤さん(仮名)もやっと納得したのかしないのか、郵便局員の言うがまま常温で送ることになりました。
でもやっぱり腐るのが心配だったんでしょうね、局員に聞きましたよ。




「明日にはお着きになりますでしょうか?」




敬語だよ敬語。尊敬語だよ。


尊敬している相手はメロンだよ。



腹立たしいの通り越して笑っちゃいましたよ。


ああ、そうですね、メロンは高級品でしたね。
すっかり飽食の時代に馴らされて、人として大切な何かを見失っていたような気がします。
忘れかけていた日本の心を思い出させてくれるような夏の日の出来事でした。






「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

「この刺青いいわ」とスケが言ったから七月六日はカラダ記念日

「常温がいいよ」と局員が言ったから八月二日はメロン記念日







そうかぁ?





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