2002年10月24日(木)のひとりごと 「初バリウム」


職場の健康診断。
私は健康診断が嫌いだ。
以前はちょうど仕事が忙しい時期と重なっていたこともあって受けもしなかった。
「健康診断受けないと過労死しても労災おりないぞ」と口の悪い上司に脅され(私はこの人の口の悪さが大好き)、やっとこさ心電図や胸部レントゲンくらいは受け始め、ここ2、3年やっと血液検査も受けるようにしていた。
そして今年ついに「胃部レントゲン」を受ける決心をしたのだ(それでも検便や検尿はしていないのでまだパーフェクトではない)。

そもそもなぜ健康診断や医者が嫌いかと言うと、べつに注射が恐いとかそんなクダラナイ理由ではなく、ただ単に面倒くさいというもっとクダラナイ理由なのだ。
自分の排泄物を後生大事に持っていくのも面倒なら、服を脱ぐことすら面倒なのだ。
べつに普段からカッチリした服を着ているわけではない(むしろ普段はTシャツにパンツという宅急便が来てもすぐには出られないグダグダの格好をしている)のだが、一度スーツを着込んでしまうとネクタイを外したりなんだりかんだり面倒でしょうがない。
いっそのこと、風呂に入る時と女性の前以外では服を脱がんというポリシーを掲げようかと思うくらいだ。
AVに出てくるような若くてかわいい看護婦さんが診てくれるなら全裸になってもいいかもしれないが、実際問題、私の数少ない通院経験ではベテランとおぼしき看護婦さんにしかお目にかかったことがない。

そんな健康診断嫌いの私が、35歳を記念して、初めてバリウムにチャレンジする

元々胃腸は丈夫だ。根拠はないが丈夫なはずだ。
だが、ここんとこ食後に胃がもたれることが多くなった。タバコとコーヒーの大量摂取と夜遊びやストレス等々原因は考えられるが、最も簡単な理由はよく噛んで食べないことだ。食べるのは早い。だが、噛んでない。ガムなんか1分持たない(飽きちゃうの)。スルメなんかもうダメ(アゴが疲れちゃうの)。
うすうす感付いてはいたのだが、次々と放り込まれるブツ切りの食材を私の消化器官が処理しきれなくなっているらしい。

そういうわけで初めてバリウムに挑むことにしたのだが、バリウムには様々な噂が飛び交っている。
「まずい」「飲みにくい」「いや最近のはそんなことはない」「イチゴ味で意外と美味しい」「思わずおかわりしちゃった(<うそつけ)」

そもそも、バリウムといういかにも化学的な名前は、およそ人体に取り込む物のネーミングではない。
という破裂系の濁音で始まる単語は、日本語の響きとして美しくない(<単なる主観)。
ババア、バカヤロー、バイ菌、なんて嫌な言葉たちだろう。で始まる食べ物なんて「ババロア」くらいしか思いつかない。
バ行そのものだってほとんどない・・・と書いてから、
「ババロア」「ビビンバ」「ブロッコリー」「弁当」「ボンゴレビアンコ」と、あっさり全部思いついてしまった。
ムリヤリ私の論を正当化するなら、やはり日本語的にベントウという響きは美しくないので「お弁当」という言い方が普及しているのだ。他は全部外国の食べ物ではないか。・・・と、ここまで書いてから、バリウムは体内に吸収されるものではないので、そこまで熱く語る必要もないなあ、と思い始めた。

とにかく、チャレンジ・ザ・バリウムである。
胃の中はからっぽにしなければならない。前日の午後10時以降、何も食してはいけない。
もっとも、本当は朝から何も食べなければよく、午後10時以降のクダリはバリウムではなく、血液検査のためだったと知ったのは当日だったのでもう遅い。
私は初バリウムに必要以上の緊張と興奮を覚え、「朝食抜きで空腹で倒れるんじゃないか」とありもしない幻想を心配し、午後9時55分頃急にチョコレートをほおばったりジュースを飲んだりし(無駄に脂肪と虫歯の原因を作っただけ)、なにも几帳面に10時きっかりでなくてもいいものを、無理に5分間で飲み食いし終えたりしていた。
興奮のためか眠りは浅く、朝食を食べている普段よりも早く目覚めてしまい、水を1杯飲んだものの、食べ物はおろか、この私がタバコの1本も口にしないで出勤したのである。
先日、嫌いな上司に「読むだけでタバコがやめられる」とかナントカいう、ものすごくクダラナイ本を読まされたのだが、その時ですらタバコを吸いながら読んでいた私が、不思議とタバコを吸いたいと思わなかった。気持ちはすっかりバリウムに奪われていたのである。

これだけ入れ込んでいたバリウムだが、いざレントゲン車に乗ってみると、アタフタと服を脱ぎ、「はい、これをこの水で飲んで。そしたらこれ飲んで。」と言われ、アタフタと発泡剤とバリウムを飲まさえてしまったのだ。
美味いも不味いも飲みやすいも飲みにくいも、何の感動も感慨もない。
何かもっと、こう、バリウムを飲む前のセレモニーみたいな物があるのかと思ったのにぃ。
そこでやっと思い出したのだが、主目的はバリウムではなく胃のレントゲンだったのだ
胃部レントゲンのセレモニーがバリウムだったのだ!
しまった!胃部レントゲンには何の予備知識も持っていない!

なんぞ知らんが、ベッドがグリグリ動いたぞ。
レントゲン技師の軽快な指示が飛ぶ。
「はい、右上げまーす。はい、ちょっと右の腰上げてみようか。そうそう、いいですねえ。今度は左いきますよぉ。左の腰上げて。もうちょっと上げてみようか。そう、いいねえ」


すいません。何の撮影なんでしょう?



そして私は何のグラビアクイーンなんでしょう?


何だかグリグリ動くベッドとカメラマンの指示が楽しかったので、少し余裕の出てきた私は「ちょっとセクシーポーズでもとってみようかしらん」と思い始めた矢先、アトラクションは終了したのだった。

下剤を飲み(これも生まれて初めてだった)、やがてトイレへ。
そこで私は伝説の白いウ●コと御対面することになる。
村に災いをもたらすとも守り神とも言われ恐れられる白蛇伝説。江口寿史が恐れた白いワニ。ジオン軍が恐れた白いモビルスーツ。
そして今ここに新たなる伝説の白いウン●

えー、お食事中の方すいません。って、パソコン見ながら飯食ってる奴もそういないか。

そんなこんなで、「腸にバリウムが残ってしまう恐れがあるので今夜の飲酒は控えてください」という注意書きに気付いたのは、初バリウムを無事終えた祝宴の後だった


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